日本人はヒゲが似合わない


日本人はヒゲが似合わないブログ:06月11日


記憶の軸が少しずつずれはじめた母親が、
お姉ちゃんの家族と暮らすようになって十年になる。

母親の容態が急変することはなかったが、
記憶の糸は緩やかに、しかし確実に細くなっていく…

今では、母親にとって
連日会えないわたしは、
どこかのお姉さんであったり、
誰かの奥さんであったりする。

そんな母親が去年の春、
急な発熱で慌ただしく入院した。

そのことを告げる電話でのお姉ちゃんのゆっくりとした口調が、
かえって母親の緊迫した状況をうかがわせた。

ナースステーションからよく観察できる位置のベッドで
母親は眠っていた。

義歯をはずした口元はくぼみ、
そこから息が洩れ続けることだけを祈りながら
蒼白い母親の顔をみつめた。
とうとう…という言葉が頭を過ぎる。

ありがたいことに、
熱は上下しながらも少しずつ平熱に近づいていき、
入院からみっか後、一般病棟の個室に移ることができた。

快方に向かってはいたが
熱発の原因が不明とのことで、
お姉ちゃんとわたしは
交代で一日中母親に付添った。

体温が安定しないことが不安だったこともあるが、
母親と二人きりになれる時間を
わたしは大切にしたかった。
ここなら、今なら、照れずに思いきりやさしくできる…

ご飯前、おしぼりで手を拭いてやると、
「ありがとうございます。すみませんねぇ」と
他人行儀なことを言う。

ミキサーで砕いた形のないご飯でも、
「ああ、おいしい」と目を細め、
介助するわたしに、
「ねえさんも、おあがんなさい」と気を遣う。

童謡のCDを流すと、
言葉を覚えはじめた子どものように語尾だけを口ずさみ、
指で調子をとる。

多くの言葉を忘れてしまっているはずなのに
プラス指向の言葉だけが出てくることは、
母親を世話するわたしにとって
何より心安らぐことだった。



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